キャリアコンサルタントの資格取得には講座の受講が必要という話を聞いて、費用が気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事ではキャリアコンサルタントにかかる費用について詳しく解説いたします。
記事の前半ではキャリアコンサルタント資格取得の費用について、後半では上位資格についてや実際にかかった費用例もご紹介しているので参考にしてみてくださいね。
キャリアコンサルタントとは?
キャリアコンサルタントとはキャリアコンサルティングを行う専門家であり、職業能力開発促進法に規定された国家資格者です。2016年に国家資格となったキャリアコンサルタントの資格者数は8万人以上、企業や教育機関、ハローワーク等の様々な分野で活躍しています。
養成講習の修了又は3年以上の実務経験といった受験資格を満たすことで受験が可能です。学科試験と実技試験に合格後、登録をすることでキャリアコンサルタントと名乗ることができます。
試験は年3回(3月、7月、11月)に実施、過去5年の合格率は概ね50%~65%であり、国家資格の中では比較的合格率の高い資格と言えるでしょう。
キャリアコンサルタントに関する費用の総額
キャリアコンサルタントの資格取得にかかる費用、資格を維持するための更新にかかる費用の総額はこちらです。

キャリアコンサルタントに関する費用として、①資格取得にかかる費用②更新費用の2種類があります。資格取得にかかる費用は目安として約26万円~ですが、給付金が80%利用できた場合は目安として121,800円~です。
キャリアコンサルタントの試験を受けるには、3年以上の実務経験を満たしていない場合は養成講座の受講が必要です。また、試験合格後に登録を行うことでキャリアコンサルタントと名乗ることが可能となります。そのため、キャリアコンサルタントになるためには養成講座の受講料・試験の受験料・登録料が必要です。大きな金額ですが、専門実践教育訓練給付制度を利用すると受講料の最大80%が支給さるため、自己負担が軽くなります。
更新費用とはキャリアコンサルタントとしての資質を担保するために、5年ごとに受講する更新講習の受講料と手数料のことです。どの講座を受講するかにより費用は異なりますが、平均10万円前後が目安です。それぞれの費用や内容について詳しく見ていきましょう。
キャリアコンサルタント資格取得にかかる費用
キャリアコンサルタントの資格取得に必要な費用は「養成講習の受講費」「試験の受験料」「登録料」の3つです。

実際に試験を受けた観点から、必須ではないですが想定しておいた方が良い費用として「試験対策費用」「不合格だった場合の再受験料」があります。一つ一つの費用についてご紹介していきます。
独学での取得は可能?
キャリアコンサルタントの資格取得における一番大きな費用が「養成講習の受講料」です。養成講習を受講せず、独学で勉強して試験を受けることは出来るの?と疑問に思う方も多くいらっしゃします。結論として、実務経験の要件を満たしている又は実技か学科試験合格者(下記2又は3に該当する方)は独学での受験が可能です。
キャリアコンサルタントの試験を受けるためには、下記のいずれかを満たす必要があます。
実務経験が3年以上ある又は学科試験か実技試験の合格者でない場合、厚生労働大臣が認定するキャリアコンサルタント養成講習を修了することで受験資格が得られます。
キャリアコンサルタント養成講座の受講料
厚生労働大臣が認定するキャリアコンサルタント養成講習は2025年現在で22団体あります。キャリアコンサルタント養成講座の受講料は20万~50万と団体によって異なります。
大きな金額ですが、国の専門実践教育訓練給付制度の指定講座では、条件を満たした場合は最大で受講料の80%が支給されます。専門実践教育訓練給付制度によって受講料の80%がが支給された場合の一例を見ていきましょう。

専門実践教育訓練給付制度が利用できると、実際の負担額は例の場合だと66,000円と負担が大きく変わります。ご自身が該当するかどうかも含めて、制度について知っておくと安心ですね。また、団体の全てが専門実施教育訓練給付金の対象ではないため、どの講座が対象となるかについては別記事でご紹介します。
試験対策にかかる費用
養成講習修了後の2か月~4か月程度後にキャリアコンサルタントの試験が実施されます。講習では幅広い知識を教わるため、この期間にご自身で理解を深めることができます。
勉強をして苦手分野が見えてきた場合、団体ごとで開催している試験対策講座を受講することが可能です。試験対策講座の内容としては、学科の演習問題・論述の添削・面接対策・模擬試験など内容や費用は様々です。必須ではないですが、見込みとして2万~3万円想定しておくと安心かもしれません。
試験の受験料
キャリアコンサルタント試験の受験にかかる費用は合計38,800円です。学科試験と実技試験があり、それぞれ受験料がかかります。

特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会、特定非営利活動法人日本キャリア開発協会、どちらの試験の受験料も同額です。試験は概ね毎年3回、3月7月11月に実施されています。
キャリアコンサルタントの登録料
キャリアコンサルタントとして名乗るためには、試験合格後に国のキャリアコンサルタント名簿への登録が必要です。登録にかかる費用は合計17,000円です。法令に基づいて、下記の登録手数料と登録免許税を納付します。

申請書にキャリアコンサルタント登録免許税として9,000円分の収入印紙を貼り付けて登録申請します。登録センターでの審査完了後に登録手数料の8,000円を支払うという流れです。
不合格だった場合の再受験料
キャリアコンサルタントの試験は、学科試験と実技試験のそれぞれで合否が決まっています。科目合格があるため、片方合格をした場合は不合格の科目のみを受験できます。
学科試験を再度受験する場合は8,900円、実技試験は29,900円費用が必要です。
キャリアコンサルタントの資格維持・更新にかかる費用
キャリアコンサルタントの国家資格を継続するには、登録日から5年ごとに更新手続きが必要です。継続的な学習によりキャリアコンサルタントとしての資質を担保することが目的です。下記が更新に必要な費用です。

厚生労働大臣が指定する「キャリアコンサルタント更新講習」で知識講習8時間と技能講習30時間を修了し、登録満了日の30日前までに更新申請を行います。自動更新ではないため、申請期間を過ぎると資格が失効するので注意が必要ですね。更新にかかる費用についてそれぞれ見ていきましょう。
更新手数料と受講料
知識講習8時間と技能講習30時間の合計38時間の講習を修了して、更新手数料8,000円を支払います。更新講習は団体や講座によって費用が異なります。技能講習の内容は自由に選択することができるため、現在必要な分野やこれから携わりたい分野に特化した講習を選ぶことが可能です。
例えば、会社組織でのキャリアコンサルタントに必要な技術を得たい方は、下記のような講習を選ぶこともできます。(例ですので実際の講習内容や費用は各団体でご確認ください)
| グループアプローチに関する理論 | 8時間 | 18,000円 |
| セルフ・キャリアドック導入に関する支援 | 6時間 | 24,000円 |
| メンタルヘルスを学ぶ | 4時間 | 10,000円 |
| ジョブ・カードの活用 | 8時間 | 16,000円 |
| キャリア支援の実践 | 4時間 | 9,500円 |
| 合計 | 30時間 | 77,500円 |
更新講習が免除になるケース
キャリアコンサルタント名簿に登録後、上位資格である「キャリアコンサルティング技能士(1級・2級)」を取得した場合は更新講習が不要となります。また、下記のいずれかの場合、合計10時間以内に限り技能講習の時間に充てることができます。
費用を安く抑える方法は?
キャリアコンサルタント資格取得に関わる費用をご紹介してきましたが、一番負担の大きい費用は「養成講座の受講料」です。実務を行うために重要なことを学べる養成講座ですが、費用を抑える方法としては次の3つがあります。
①要件を満たして独学で受験する
②養成講座を比較して選ぶ
③専門実践教育訓練給付金を利用する
費用を抑える方法を詳しく見ていきましょう。
実務経験により独学受験が可能
国家資格キャリアコンサルタントの受験資格として、キャリアコンサルティング未経験者は指定の養成講習の修了、又は学科試験か実技試験に合格している必要があります。
一方、実務経験の条件を満たしていると判断された場合は、養成講習を受けずに独学で受験することが可能です。キャリアコンサルタント試験の受験資格における「実務経験」に該当するかどうかは、以下のいずれの項目にも適合するかを基準に、個別に判断されます。
例えば、教育機関で就職希望の学生に一対一で行う就職相談に3年以上従事した方などが該当する可能性があります。現在実務についている方は、今までのキャリアが実務経験に該当するかどうか、各試験実施機関のHPをご確認いただくことをお勧めします。
実務経験を満たしていると判断された場合は、試験受験料と登録にかかる費用の合計55,800円でキャリアコンサルタントの資格取得が見込めます。未経験の方は費用を抑える方法として、専門実践教育訓練給付金が利用できるかを見ていきましょう。
専門実践教育訓練給付金を利用する
養成講座の受講料は約20万円~50万ですが、専門実践教育訓練給付金を利用して条件を満たした場合は、最大で受講料の80%が支給されます。
専門実践教育訓練給付金は全ての講座で利用できるわけではないので、国の専門実践教育訓練給付制度の指定講座かどうか事前に確認をしておくと安心ですね。
「専門実践教育訓練給付金」は、一定の条件を満たす雇用保険の被保険者又は被保険者であった方が対象となります。また、養成講習開始の原則2週間前までに、訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成し、ハローワークへ必要書類を提出する必要があります。専門実践教育訓練給付金を利用することで、対象となる方は受講料の最大80%が支給され、自己負担額を大きく抑えることが可能です。
養成講座を比較する
養成講座の受講料は約20万円~50万円と団体によって費用が異なります。どの団体も費用や講座内容をHPなどで公開しているため、申込前に比較することをお勧めします。カリキュラムは講義と演習を含めて150時間と決められています。一方講義の方法、教室に通学するかオンラインかといった受講方法、サポート体制や教材は団体ごとに違いがあります。
費用を最小限に抑えるという観点で選ぶなら、最安の講座を受講するというのも一つです。しかし、忙しい状態での資格取得の場合はサポートが手厚い方が良い、資格取得後に活かせるかどうかが重要等、人によって何を優先するのかは異なります。
受講するにあたって「試験までのサポートや対策が自分にあっているか?」「今後の業務を行う上で役立つスキルが身につくか?」等、試験とキャリアについての観点も踏まえて養成講座を選ぶことが大切ですね。
また、受講期間も3ヶ月~6ヶ月と講習によって違います。受験手続きの都合上、キャリアコンサルタント養成講習を修了してから、受験日までには約2ヶ月~4ヶ月程度の自習期間があります。学びたい内容や体制、受講料、受講時期も踏まえた講座の検討が必要です。
スキルアップしたい場合の上位資格取得にかかる費用
キャリアコンサルタントの資格取得後、さらにレベルアップを目指す場合に向けて、「キャリアコンサルティング技能士」についてご紹介します。
2008年から開始されたキャリアコンサルティングの知識と技能を図る国家検定「キャリアコンサルティング技能検定」。キャリアコンサルティングの「熟練レベル」「指導レベル」の能力保持を証明できる唯一の検定です。学科試験と実技試験の両方に合格すると、試験等級に応じて「2級キャリアコンサルティング技能士」「1級キャリアコンサルティング技能士」の称号が付与されます。それぞれの資格取得にかかる費用を見ていきましょう。
キャリアコンサルティング技能士2級になるための費用
国家資格キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントの業務を行うにあたり土台である資格に対して、キャリアコンサルティング技能士2級は「熟練レベル」になります。幅広い相談者に対して関係構築のもとに問題・課題などを見立てることができ、1対1の相談支援が的確にできるレベルを求められます。費用は下記の通りです。

キャリアコンサルティング技能士1級になるための費用
1級キャリアコンサルティング技能士は、キャリアコンサルタントに対して指導ができ、キャリアコンサルタントの活動全般にリーダーシップを発揮することができる、「指導レベル」になります。個人の相談支援を2級より高い水準で的確に行うキャリアコンサルティング能力を有し、組織への働きかけや関係者との連携などのコーディネート能力が求められます。費用は次の通りです。

費用をかけてキャリアコンサルタント資格を取得するメリット
キャリアコンサルタント資格取得から更新まで、安く抑える方法はあっても一定の費用がかかりますよね。実際に資格を取得した場合の年収や収入UPにどう生かすことが出来るかに着目して、メリットとデメリットをお伝えしていきます。
キャリアコンサルタントの年収は?
キャリアコンサルタントの年収については、「労働政策研究報告書No.227」で報告されています。キャリアコンサルタントの年収は100万円未満から1,000万円以上までと幅広く、最も多い年収は「300~400万円未満」(16.5%)です。活動の場としては企業領域が最も多く、次いでハローワークや転職再就職支援等の需給調整機関領域、学校領域、地域・福祉領域での活動が見受けられます。
「正規雇用」では年収500万円以上が多く、「非正規雇用」では300万円未満が多いという結果でした。「フリーランス・個人事業主」になると年収100万円~300万円の方が多いことから、個人としてキャリアコンサルタントのみで稼ぐには現状課題が多いことが読み取れます。一方「年収1,000万円以上」を得ている人の割合は9.4%であることから、働き方によっては高収入を得ることも可能であることが分かります。
独立したい人にはデメリットが大きい?
キャリアコンサルタント資格は、取得後すぐに安定した職業として成立するわけではありません。独立したいから資格を取ろうと考える方にとっては、資格取得にかかる費用に対してその後すぐの収益を考えると、デメリットが大きいでしょう。労働政策研究所の調査によると、キャリアコンサルタントとして個人事業主やフリーランスとして活動している人は、キャリアコンサルタント有資格者の約7.2%です。
キャリコンサルタントは2016年に国家資格化され名称独占資格ではあるものの、弁護士や社労士のような独占業務は持っていません。そのため、キャリアコンサルティングは無資格者でも実施可能となっています。どの資格でも共通していることですが実績がなく集客経験がない場合、資格を取ったからといってすぐに独立して収入を得ることは難しいでしょう。「資格取得後に独立して稼ぎたい」という方は、一定期間は企業で経験を積む等の期間や収入を得るまでの費用の準備が必要だと言えます。
独立している方の中には、社会保険労務士や中小企業診断士など他の資格やスキルと合わせて活動している方も見受けられます。ご自身の活躍したい分野に合わせて、ダブルライセンスを取得することで付加価値を高めることができます。
転職活動に活かせる
キャリアコンサルタントの資格を活かしやすい職場としては、下記の選択肢があります。
公共機関での需要としては、ハローワークやジョブカフェでの求職者支援やキャリア形成のサポートがあります。大学では就職に係る業務の総合職として、学生への就職支援を行います。民間企業では、福祉分野や人事部で専門的なカウンセリングを提供できるスキルは強みになります。
手当がつく可能性がある
企業で働いている方の場合、キャリアコンサルタント資格を取得すると「資格取得手当」がつく場合があります。資格手当を支給している企業の割合は、厚生労働省の「令和2年就労条件総合調査」によると50.8%に上ることが報告されています。ご自身が所属されている部署でキャリアコンサルタント資格が該当するかどうか、どの段階で申請するか等を事前に調べておきましょう。
また、「セルフ・キャリアドック」と呼ばれる従業員のキャリア形成を促進・支援する取り組みの導入が進んでいることもあり、企業内ではキャリアコンサルティングの需要が少しづつ高まっています。人事や管理職の方にとっては、キャリアコンサルタントの学習をすることが、社員面談におけるカウンセリングスキル向上にも繋がります。
副業に活かせる
キャリアコンサルタントの資格は、自身のライフスタイルに合わせた副業が可能です。近年オンライン相談の需要も高く、自宅でキャリアコンサルティングの仕事をすることができます。実際の例としては下記のよう副業があります。
| キャリア相談(30分) | 2,000円~10,000円 |
| 履歴書・職務経歴書の添削(1件) | 1,500円~20,000円 |
副業サイトに登録して仕事や転職についてお悩みのあるに、相談や書類添削等を行う仕事です。1件に対する単価は実際の副業サイトを見てみても様々です。始めのうちは単価は安いですが、実績を積んで相手に提供できることが増えてくると副業としても一定の収入が見込めます。
オンライン相談の場合は自宅にいながら、土日など本業以外の時間を活用して副業することができます。多様な相談者へのカウンセリングを行うことでご自身のスキルが身につき、本業との相乗効果が生まれる可能性もあります。
実際にかかった費用総額
筆者がキャリアコンサルタントを目指すにあたり、実際にかかった費用を記載しますので、参考の一つとしてご覧ください。

養成講座受講中は会社員でしたが前職、業務委託で長年働いていたこともあり、受講したい時期に専門実践教育訓練給付金の要件を満たしていないため自己負担額が大きいですね。
交通費は試験会場までの往復費用です。講習が通いの場合、場所によっては別途交通費の想定をしておくと良いかもしれません。また、カフェ代ですが勉強のために利用した費用を記入しております。会社帰りや休日に家では寝てしまいそうだったので、カフェに行く回数を決めて勉強代として当てていました。ご参考になれば幸いです。
まとめ
キャリアコンサルタントにかかる費用についてご紹介してきました。キャリアコンサルタントの資格取得までの初期費用は約30万から50万円、キャリアコンサルタントの資格更新は5年ごとに約10万を目安に必要だとご説明してきました。
専門実践教育訓練給付制度の活用で受講料の最大80%給付を受けられるため、対象となるかどうかによって費用の負担は大きく異なります。資格取得後すぐの独立にはハードルが高いですが、本業のスキルアップや副業に活かすことができる資格です。ご自身のキャリアプランに合わせて資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。