キャリアコンサルタントって具体的にどんな仕事をしているの？と疑問がある方。
この記事を読むと次の疑問が解消できます。
では、キャリアコンサルタントの仕事内容や活躍の場について見ていきましょう。
そもそもキャリアコンサルタントとは？
キャリアコンサルタントは一言でいうと、「キャリアコンサルティングを行う専門家」です。
例えば
「今の会社を続けるか、転職するか迷っている」
「親の介護が必要になるけど、今後どうやって働いていこう？」
「キャリアに漠然とした不安があるけど、何をしたらいいか分からない」
このように職業の選択・今後の職業生活の設計・能力の伸ばし方などの相談にのり、
面談を通じて相談者の考えを一緒に整理して実現できるようにサポートする役割がキャリアコンサルタントです。
名称独占資格
キャリアコンサルタントは2016年4月に職業能力開発促進法に規定された、名称独占の国家資格です。
資格保有者以外は「キャリアコンサルタント」と名乗ることはできません。受験資格を満たして試験を受け、合格後に登録することでキャリアコンサルタントなることが出来ます。
キャリアコンサルタントの資格取得の方法については、こちらの記事もご参照ください。
「キャリアアドバイザー」等の似た名称があるので紛らわしいですよね、
キャリアアドバイザーは、主に人材派遣会社において求職者の面談を担当する職種に使われることが多く、資格が無くても名乗ることが可能です。
キャリアコンサルタントの仕事内容
キャリアコンサルタントの主な仕事を３つご紹介します。
面談を通じたキャリアサポート
主に１対１で相談者と面談を行い、相談者のキャリアデザインをサポートします。
対象
10代の学生から退職後の方まで、幅広い年齢層の方の相談に応じます。
場所と相談方法
企業・ハローワーク等の需給調整機関・教育機関等で行われます。相談方法は対面だけではなく、オンラインやSNSなどの面談もあります。
相談者の経験・スキル・価値観などの自己理解を深めるサポートをして、仕事理解や労働市場を踏まえたうえで今後の希望を明確にしていきます。
書類作成の支援
就職や転職活動で必要になる、様々な書類作成の支援を行います。
学生向けのエントリーシート、転職の際に必要になる職務経歴書やジョブカード等の作成支援を行います。
書類自体は相談者が作成しますが、何をどう書けばよいのか迷ってしまう方もいらっしゃいます。
話を聞きながら今までの活動などを、どう書類に活かすのか一緒に考えていきます。
研修やセミナーの講師
仕事場によっては自己分析や仕事理解のための研修、キャリアデザインセミナーなどの講師をする場合もあります。
また、企業等でグループワークを行う際の、ファシリテーター役を務めることもあります。
面談の具体的な内容は？
「面談」と言ってもイメージがわかないという方も多くいらっしゃいるため、面談内容の例を見ていきましょう。
自己理解を深めるサポート
自分の価値観や今の仕事に対してどのように感じているのか、ご自身についての理解が足りないという方は少なくありません。
「自分は今の仕事が合っていないような気がする」という相談内容だったとしても、すぐに転職の話に進むのではなくまずは相談者自身のことや今の仕事に対する気持ち等について伺っていきます。
面談ではキャリアコンサルタントが傾聴を通じて話を一緒に整理して、適切な質問を通して内省を深めてもらうことで自己理解を進めていきます。
キャリアコンサルタントという言葉から、「アドバイスをすること」が大切だと思う方もいらしゃいますが、「傾聴する」ということがキャリアコンサルティングではとても重要なことです。
就職や転職の相談
「なんとなく今のまま働いていくことに不安がある」という漠然とした状態の相談もあれば、「３カ月以内に同業種に転職をしたい」といった相談もあります。
相談者の性格や価値観への理解を深め、これまでの経験や仕事をするうえで大切にしていること等を整理していきます。
専用のワークシート等でキャリアを振り返る、ご自身の価値観や能力と仕事とのマッチングのサポートをする等、相談者の状況に合わせた面談を行います。
キャリアプランの相談
「子供が独立したが、いまさら自分にどんな仕事ができるか分からない」
「今後介護の必要があり、自分が面倒を見なければならないが仕事とどう両立したらよいか」
ライフステージの変化にどう対応していけばよいのか、何を軸にして今後のキャリアプランを立てていけばよいかわかないというご相談もあります。
相談者だけではなくご家族等の状況も把握したうえで、福祉や会社の制度の確認なども行いながら面談を進めていきます。
職業適性検査
相談者の興味や価値観について理解する方法の一つに、適性検査があります。
例えばVPI職業興味検査は、短大生、大学生以上に向けた6つの職業興味領域に対する興味の強さや個人の心理的傾向を知るためのツールです。
相談者との面談を通じて、必要性があり相談者も納得した場合、職業適性検査を行うケースもあります。
職業適性検査の結果は相談者の側面の一つであることを理解したうえで、適切なフィードバックを行える能力が必要です。
検査の特性や扱い方をよく学び、注意点を理解したうえで行います。
キャリアコンサルタントの働き方
キャリアコンサルタントの活躍の場としては、下記があげれます。
・企業（人事や管理職）
・人材紹介や人材派遣会社
・教育機関
・ハローワーク等の公的機関
・フリーランスとして活動
では、それぞれの働き方についてご紹介します。
企業での活動
民間企業では、人事や管理職の方がキャリアコンサルタント資格を取得して仕事に活かしています。
人事での活かし方
従業員から相談があった際に、キャリアコンサルタントの資格を活かして現在の仕事や人間関係について個別面談を行います。
また、セルフキャリアドック導入の際に、外部のキャリアコンサルタントではなく人事が実施する場合も多く、人事の方がキャリアコンサルティング面談や研修を行うケースもあります。
管理職での活かし方
マネジメントに携わる管理職の方の場合、キャリアコンサルタントの学びを活かして１対１の面談をより有意義な時間にすることで、チームのモチベーション向上に繋がります。
人材紹介・人材派遣業での活動
人材紹介業では、転職希望者に対して求める条件をヒアリングして、求人紹介や面接対策等などのサポートを行います。
人材派遣業では、派遣先企業と派遣社員のマッチング、派遣スタッフのヒアリングなどを行います。
教育機関での活動
教育機関では、学生の就職支援や進路相談を行います。
「就職に向けて何をしていけばいいか分からない。不安がある」といった学生もいれば、時間をかけて準備をしても選考に通らず悩む学生もいます。
一人一人に寄り添い、個人の状況に合わせたサポートを行います。
具体的には、面談を通じて自己理解や仕事理解を深める、面接対策やビジネスマナーの研修、ESや履歴書の添削などを行います。
公的機関での活動
公共職業訓練やハローワークで、求職者支援やキャリア形成のサポートを行います。
すべての人の就労支援をしているので、対象者は若年者の方・生活困窮者の方・障がいをお持ちの方など幅広い層に対応します。
例えば、支給希望者に対して「訓練前キャリアコンサルティング」といった、ジョブカードを使用した面談があります。
また、求職者に対して面談やESの添削、企業とのマッチングを行います。
フリーランスとしての活動
キャリアコンサルタントのみで独立するという働き方もあります。
ただし、キャリアコンサルタント全体の人数から見ても少ないのが現状です。
理由としては独占業務知が無いことや、名度の低さが推察されます。
ただし、キャリアコンサルタントの10％以下ではありますが、フリーランスとして活動している方もいます。
副業や企業での経験を積んで専門分野を作り、集客方法を学ぶことで可能性のある働き方ですね。
企業内キャリアコンサルタント
2022年4月に行われた職業能力開発促進法の改正により、企業内におけるキャリアコンサルティング機会の確保が明確化されました。
この影響が一因として、従業員のキャリア形成を支援するために、キャリアコンサルティングを導入する企業も増えてきています。
企業でのキャリアコンサルタントの導入状況と役割について見ていきましょう。
キャリアコンサルティングの導入状況
厚生労働省によると、キャリアコンサルティングの仕組みを導入している事業所は50％です。
微差ではありますが、キャリアコンサルティングを導入している事業所は昨年より増加しています。
キャリアコンサルティングの実施者は、正社員の場合では職場の上司・管理者が72,5％、次いで企業内人事が15, 6％です。
企業外のキャリアコンサルタントは少なく、多くは企業内のキャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを実施していることが分かります。
企業内キャリアコンサルタントの役割
労働者の職業人生の長期化や雇用の流動性が高まる等、社会経済環境が激しく変化する影響を受けて、従業員の主体的なキャリア開発を行う必要性が高まっています。
企業内におけるキャリアコンサルタントには、下記のような役割があります。
従業員の自己理解のための支援
面談を通じて信頼関係を築き、自己理解を深めるためのサポートをすることが役割の一つです。
キャリアデザインのサポート
従業員の特性や抱えている問題を理解して、今後のキャリアプランの作成支援をすることも役割の一つです。
職場改善のための提案
面談を通じて浮き彫りになった課題に対して、個人の特定ができないように配慮しながら課題に対する起案をすることも役割の一つです。
産業医や人事との連携
メンタルヘルスの問題は多くの企業が課題であり、面談の中でメンタルヘルスの問題が明らかになることもあります。
産業医や人事との適切な連携を図ることも必要となります。
キャリコン資格取得後の転職先
キャリアコンサルタント資格取得後に転職を検討している方。
特にキャリア相談が未経験の場合、どのような選択肢があるかお迷いの方も多くいらっしゃいます。
ここでは、資格取得後の就職の選択肢について見ていきましょう。
キャリアコンサルタントの転職先
キャリアコンサルタントの転職先として、次のような選択肢があります。
1.人材紹介会社や人材派遣会社
2.学校のキャリアセンター
3.国営の需給調整機関
4.企業のキャリア相談室や人事部
5.就労移行支援事業所や自立訓練事業所
1～４の仕事については前項で見てきた仕事なので、５についてご紹介します。
就労移行支援事業所の支援員
就労移行支援事業所や自立訓練事業所とは次のような場所です。
就労移行支援事業所とは
障害のある方の社会参加をサポートするための福祉サービス。
就職準備や就職活動、就職後の定着支援をする場所。
自立訓練事業所とは
障害者総合支援法で定められた指定障害福祉サービス。
生活訓練は生活能力の維持・向上のための支援をする場所。
支援員として身体や精神に障害のある方に、就職・転職のサポートをするのが仕事の一部です。
転職における注意点
資格を取ってから転職活動をしたのに、思っていたのと違った・・・
理想とのギャップを埋めるためにも、資格取得後の転職における注意点を見ていきましょう。
資格が必須ではない企業が多い
転職の前提として、キャリアコンサルタントの資格が必須ではない場合の方が多いでしょう。
もちろん資格を持っていることで有利に働くことはありますが、「転職のための資格取得」である場合は、条件の確認と資格取得を先にするかどうかの検討が必要ですね。
競争率が高い
キャリアコンサルタント資格所有者向けの正社員は求人が少ないため、競争率が高いです。
ハローワークや大学職員は募集をしていますが、非正規雇用の募集が多く正社員での応募は競争率が激しくなります。
一方、正社員での募集が比較的多い職種としては、転職エージェントが挙げられます。
転職市場が盛んなこともあり、正社員での募集も多く転職サポートの実務経験を積むことができます。
専門分野を身につける
資格を持っていることは、一定以上の能力や意欲がある証明になります。
ただし、養成講座では広範囲の知識を学べますが、あくまで基本的な内容です。
キャリアコンサルタントは幅広い領域で活躍できる一方、全ての領域に対応することは難しい側面もあります。
どの領域で活躍してきたのか、これからどの専門領域で知識を深めていきたいのかを明確することが大切ですね。
副業からスタートする方法
キャリア相談が未経験の場合、転職の前に副業をすることも方法の一つです。
最近はオンライン相談も増えているので、自宅にいながら副業することも可能です。
フリーで集客から決済まで行うのはハードルが高いですが、最近ではプラットフォームサービスに登録することで相談だけに対応することも可能です。
特に現職でキャリア相談が未経験の場合は、副業や現職の中でキャリア相談に関わるポジションを目指すのも方法の一つですね。
キャリアコンサルタントに必要なスキル
キャリアコンサルタントとして活動していくために必要なスキルについて見ていきましょう。
キャリアコンサルタント資格の取得
キャリアコンサルタントとして活動するには、キャリアコンサルタント試験に合格して登録をする必要があります。
キャリアコンサルタント試験は学科と面接の2科目あります。
試験ではカウンセリング理論から労務や学校でのキャリア教育についてまで、幅広い知識が問われます。
試験についての詳しい内容は、こちらの記事もご参照ください。
傾聴スキル
相談者の話を聴くスキルは、キャリアコンサルタントの基本であり重要な能力です。
相談者は様々な背景を持ち、人や環境への考え方がキャリアコンサルタントと全く異なる場合も多くあります。
相談者に対して否定しないこと、「こうした方が良い」とアドバイスをすぐにしようとしないで、相手の考えを理解して尊重しようという姿勢が大切です。
専門分野の継続的な自己鍛錬
キャリアコンサルタントの活動領域は行政・教育・企業と幅広い範囲にわたります。
活躍する領域の知識や技能の向上と、情報収集を継続的に行えるスキルが必要です。
また、キャリアコンサルタントの専門領域を超える範囲の相談においてはリファを行うため、他分野の専門家との繋がりを持つことも大切です。
キャリアコンサルタントの仕事内容まとめ
キャリアコンサルタントは人材紹介や教育機関、公的機関や民間企業など様々な場所で活躍しています。
仕事としては、主に面談や書類作成などを通じて、相談者の自己理解を深めキャリアサポートを行います。
企業内で従業員に対して行うのか、人材紹介会社や公的機関でキャリアコンサルティングを行うのかによっても、仕事内容は変わります。
どこで活動するにしても、キャリアコンサルタントとして仕事をするには資格の取得が必要となります。
資格を取得してどの分野でどう生かしていきたいか等を明確にして、取得時期の想定ができると良いですね。